【あの頃イタリアで その25 怪しい老人が住むホテル(2)】

投稿者 :佐々木英理子 on

こんにちは。

ブログ更新を待ちわびて(?)くださっている皆様、大変お待たせしました!POP-UPストア出張のため更新が遅れておりましたが、ようやく続きが出来上がりました!

さてさて、怪しいホテルで一夜を過ごすことになった私に果たして何が待ち受けているのか・・・続きをどうぞ。

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昨晩は寝台列車だったのですぐにでもシャワーを浴びたかったが、それよりも何よりも、一刻も早くパレルモの町を散策したい気持ちが勝り、荷物の整理もそこそこにホテルを飛び出した。

日が暮れるまであまり時間が無かったが、裸体の彫像が立ち並ぶ"プレートリア広場"とそのすぐ横にあるバロック様式の交差点、"クアットロ・カンティ"をカメラに収め、ゴッドファーザー3”の名所として有名な"マッシモ劇場"まで足を延ばした。

ホテルへの帰り道、スーパーで晩ご飯の缶詰とビール2本を購入。いくら貧乏旅行でもビールだけは欠かせない。しかもイタリアでは水を買うより安いので、ビール好き(その他アルコール類を含む)の私に選択の余地など無い。

ホテルの部屋には冷蔵庫が付いていないので、おじいちゃんにビールを冷やしてくれるようにお願いすると、快く1階にある自宅の冷蔵庫に預かってくれた。

これで良し!ビールが冷えるまでまずはシャワーだ!ようやく二日分の汗と埃を洗い流す。パレルモはとにかく車とバイクの交通量が多い。半日歩き回っただけで喉がイガイガになるし、鼻の穴は真っ黒だ。意外にも水圧が強いシャワーでそれらを全て洗い流す。

「あ~すっきりした!さ~て、いよいよビールだ!」アンティークとも言える古びた電話の受話器を上げ、フロントの番号を回す。

「あの~ビールを取りに行ってもいいですか?」

「いやいや大丈夫。わしが部屋まで持って行ってあげるよ。」

「すみませ~ん!よろしくお願いしま~す!」

と、間もなくドアをノックする音がする。

「は~い!」と勢いよくドアを開けると、両手にビール瓶を握ったおじいちゃんがニコニコしながら立ってる。

「グラッツェ!」とビールを受け取ろうと手を伸ばすが、私をからかっているのか、おじいちゃんは両手を後ろに回してビールを渡さない。

ちょっとちょっと~!一刻も早く飲みたいんだからふざけてる場合じゃないよ~!と、ビールに手を伸ばすと、なんとおじいちゃんは両手を後ろに回したまま、上半身で私をグググ~っと部屋の中に押し戻し、自分も一緒に部屋に入って来るではないか!

「へ?!」と思ったのも束の間、おじいちゃんはビール瓶をテーブルに置くが早いか、呆気にとられて突っ立っている私に思いっきり抱きついて来た!

ギャ~!!・・と、叫ぶ間もなかった。おじいちゃんは身をかがめ、私の頭にほおずりしながらこう言う。

「かわいいのう~かわいいの~!わしはな~わしはな~日本の女の子が大好きなんだよう~!」

絞り出すようなか細い声の告白と同時に、突如として解明されたホテルオリエンタル命名の謎。・・・そうだったのか・・・。

しかし、私は羽交い絞めにされながらも意外に冷静であった。それはおじいちゃんの力が哀れなほど弱々しく、いざとなればコテンパンにやっつけられるという自信があったからに他ならない。

そこで、ちょっとだけ力を込めておじいちゃんを押しのけてみた。と、呆気なく後ろによろけるおじいちゃん。そのままグイグイおじいちゃんをドアの外に押し出し、「グラッツェ!グラッツェ!ビール、グラッツェ!」と叫びながらすかさずドアを閉めて鍵をかけた。

しばし廊下に耳を澄ます。少し間があり・・力なく去っていく足音に、なんだか哀れな気がしないでもない。

その後気を取り直して、ようやく待望のビールと晩ご飯の缶詰をテーブルに広げた。複雑な心境ながらも、疲れ切った細胞にビールがシュワシュワと染み込んでいく。

なんと、その時の貴重な写真が残っている。これだ↓

なんだ?この苦悩に満ちた表情は?しかも寝台列車の写真すら撮らなかった私が、なぜこんな写真をわざわざタイマー撮影しようと思ったのか・・謎である。安宿をバックにズタボロ姿なので長い間他人に見せる機会は無かったのだが、改めて見ると何だか面白くも感慨深い。

翌朝早く、何事もなかったように送り出すおじいちゃんに別れを告げてホテルを後にしたが、その後もふと思うことがある。初めに案内された廊下に囲まれたあの部屋は何だったのだろうか?あのままあの部屋で眠っていたら、気付いた時にはおじいちゃんが添い寝しているという事態になっていたりして・・・。怖いのでこれ以上想像しないようにしている。

追伸:先日Googleマップで検索したら、ホテルオリエンタルはまだあの当時の外観のまま存在しておりました。あのおじいちゃんはとうに天国に召されたはずなので、息子か娘が後を継いだのでしょう。果たして彼らはこのホテルの名前の由来を知っているのでしょうか?おじいちゃん無き今、その秘密を知っているのは私だけかも知れませんね(笑)

 

つづく・・・。

※この思い出話の舞台は1994年-1996年のイタリアです。スマホはおろか携帯電話やデジカメ、パソコンすら一般家庭に無い時代であり、主な通信手段は国際電話かFAXでした。

 

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