【あの頃イタリアで その47 マジックミラーの裏で蠢く怪しい面々③】

投稿者 :佐々木英理子 on

こんにちは。いよいよ春ですね~。卒業シーズンですね。先日高校に入学したはずの姪っ子が”卒業した”という驚きの事実を知らされ、一人、時空の狭間に取り残されたような・・・何とも言えないもの寂しい気分に陥っています。

さて、今日は怪しいお土産物屋さんシリーズ第三弾ですよ・・・

----------------------------------------

ミラノの片隅にある日本人観光客向けの謎のお土産物屋”マドラ”。マフィアが経営しているという噂は由美子さんのみならず他の従業員たちからも聞いた。これはもう、限りなく事実に近い噂なのか?しかし、みんな口を揃えてこう言う。

「だけどね~従業員には優しいし、働いた分のお金はきちんと払ってくれるから大丈夫よ!」

他の働き口を探す余裕すら無かった私は、数日後、週払いのアルバイト代がきっちり手渡しされた時点で、その状況をすんなり受け入れてしまった。1週間もするとミネラルウォーターを装ってペットボトルに水道水を入れる作業も何とも思わなくなってしまったし、2週間もすると本物か偽物か分からない高級ブランド品を説明しながらお薦めできるまでに成長(?)してしまった。

そんなある日、マドラでちょっとした事件が起きた。いつも通り日本人観光客御一行様を迎え、店内が活気づいてからしばらく経った頃、何やら地下の休憩室から金切り声が聞こえる。たまたま階段付近で仕事をしていた私は、その様子を見るべく恐る恐る地下へ降りてみた。

顔を真っ赤にして大声を上げているのは50代位の日本人女性。日本人従業員の明美さんに向かって怒りをぶつけている。

「だから!このペットボトルに入っているのは本当にミネラルウォーターですかって聞いてるの!だって初めから蓋が開いていたのよ!他のボトルもそう!みんな蓋が開いているじゃない!」

!!こ、こ、これはマズい!!とうとう見つかってしまった!!

そこへ事態を聞きつけたアルベルトが小走りで一階から階段を降りて来た。彼女兼秘書の純子さんも後を追って来る。

「スミマセ~ン!タイヘンスミマセ~ン!」?いつも流暢な日本語を話すのに、なぜか急に片言である。そして唐突にイタリア語で何か話し出した。話が一区切りつくと横にいる純子さんを目で促し、純子さんが日本語で通訳をする。そしてまたアルベルトがイタリア語で話す。そしてまた純子さんが訳す。日本語ペラペラのはずなのにだ。

若いとはいえアルベルトは男前で貫禄がある。おしゃれなネクタイとスーツでビシッとキメたイタリア人男性に真正面からイタリア語で話しかけられ、怒り爆発で前のめりだった女性の腰がみるみる引けて行くのが分かる。なんて巧妙な手口!さすが(マフィア?)!実に上手い!二人とも手慣れたものだ。

そして数分後・・・一体全体何を聞かされたのか、その女性は若干不満気に見えるものの、無理やり説得させられた様子で1階の売場へ戻って行った。

無事に御一行様を見送った後、そばでアルベルトの話を聞いていた”第一怒られ人”の明美さんに事情を聞いてみた。

「あんなに怒ってた人をどうやって説得したんですか?」明美さんは私の顔を見てプププ!と笑いながらアルベルトが話した内容を教えてくれた。

「あのね、何も知らない新入りのアルバイトが、捨てるはずだったペットボトルに水道水を入れて冷蔵庫に戻してしまったんだって!新しいミネララルウォーターはたくさんストックしてあるのにこちらの教育不足で本当にすみませんでしたって言ってたよ!」

「・・・・・・」絶句!それって私のこと?・・・ですよね・・・。

そして翌日、丸で何事も無かったかのようにペットボトルは水道水で満たされるのであった。

結局私は次のアルバイトが見つかるまでの1カ月半もの間、この謎の土産物屋で働き続けた。若干の後ろめたさは残ったものの、マドラのお陰で母からの電話(その44参照)で始まった危機的経済難から逃れるためのスタートダッシュを切ることができたのである。

あのお店はとっくに無くなったろうな~。あそこで働いていた個性的な人たちは今頃どうしているのだろう・・と美味しいミネラルウォーターを飲みながら思う今日この頃です。

つづく・・・

 

※このお話はノンフィクションですが、登場人物の名前は仮名です。(たま~に本名あり)
※この思い出話の舞台は1994年-1996年のイタリアです。スマホはおろか携帯電話やデジカメ、パソコンすら一般家庭に無い時代であり、主な通信手段は国際電話かFAXでした。
 

【前回を読む】

【その1から読む】

『にほんブログ村』で読む

 


この投稿をシェアする



← 投稿順 新着順 →


0件のコメント

コメントを残す

コメントは承認され次第、表示されます。