【あの頃イタリアで その53 キツネ目女から赤目女への変貌】

投稿者 :佐々木英理子 on

一日遅れのこんにちは。昨日ブログをアップするはずが、あまりの天気の良さに遊びほうけてしまいました(汗)

さて早速、シチリアキツネ目事件の結末とは!

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ウスティカの太陽がジリジリと肌を焼いていることすら気に留める余裕も無く、私はしばらく無言のまま甲板に寝転がっていた。海底でパニックになり、体力を消耗してしまったため船に上がるのに手こずり、しばらく海面に浮いていたので波酔いをしてしまったのだ。

遠足気分で浮かれ過ぎ、空気が読めないヌッチョは相変わらず大はしゃぎで、目を閉じたまま横になっている私にちょっかいを出しては笑っている。怒る気力もなく放っておいたのだが、それを見かねたドイツ人夫婦の妻がヌッチョを叱ってくれた。

「彼女は具合が悪いって言っているのに!あなたは一体何をしているの!」急激にしゅんとする子供じいさん(笑)お陰でしばらく静かに休むことができた。

波酔いの気持ち悪さが大分落ち着き、もうそろそろ港に着く頃かと思われたので、私はようやく閉じていた目を開け、体を起こした。すると、目の前に座っていたヌッチョがいきなり私の目をマジマジと覗き込む。

「おまえ・・目が・・・目がすごく赤いぞ。」

そこでようやく海底で起きた事の成り行きをヌッチョに話して聞かせた。話し終わるとヌッチョはすっくと立ち上がり、キャビンにいるインストラクターのエンツォとなにやら話し始めた。何度か頷くヌッチョが窓越しに見える。そしてヌッチョはエンツォを連れて私のところへ戻って来た。今度はエンツォが私の目を覗き込む。そしてヌッチョに早口のシチリア弁で何かを話した後、

「多分大丈夫だから、心配しないでいいよ!」イタリア共通語でそう言い残すとエンツォはキャビンに戻っていった。訳が分からずきょとんとしている私にヌッチョは言う。

「明日の朝一番に、島の上にある病院に連れて行くから。そこで一度診てもらおう。」

“へ?私に何が起こったの?”

港に着いて宿に戻ると真っ先に鏡を見た。そこで見たのは・・・え?・・・死んだ魚の目だ!しかも活きが悪い魚!白目全体が内出血を起こしている!

海水浴から帰った妹と弟が何事かと寄って来た。

「うわ~!なにその目!死んだ魚みたいだ!」はい、私も同感です。

翌朝、ヌッチョに連れられ、島に一つだけある公立病院に行った。担当医師が早口シチリア弁のヌッチョの説明に頷きながら私の目の様子を見る。しかし、特に検査をするわけでも、薬を出してくれるわけでもない。

「この病院には目の検査設備がないから、ミラノへ帰ったらちゃんと調べてもらった方がいいね。マスクの中が低気圧になったのが原因で充血しているけど、大したことはないだろう。だけど、これからもっともっと白目が真っ赤になって行くから、驚かないでね。」

と医師が言っていたと、帰り道、ヌッチョがゆっくり説明をしてくれた。

その翌日、私たちはヌッチョとの別れを惜しみながら、姉妹弟三人旅の最後の地であるウスティカ島を後にした。パレルモからミラノ直行便でミラノに戻り、アパートに置いてあるスーツケースに荷物を入れ替えた後、今回の旅に参加できなかった上の弟の結婚式に出席するため、私も一緒に日本に一時帰国することになっていたのだ。

披露宴は帰国してから三日後。その間に眼科で検査をしてもらい、内出血以外の異常が無いことを確認することができた。しかし、ホッとしたのも束の間、ウスティカの医師に宣告された通り、白目は日に日に赤さを増していく。

とうとう披露宴当日には今にも血が滴るような・・・決して大げさでは無く、拭うとハンカチが真っ赤に染まってしまいそうな・・・それはまるで映画で良くみるバンパイアのような赤目になってしまったのだ。

“どうするのこれ?!” 披露宴当日、控室の大きな姿見の前で、まじまじと自分の顔を見た。私の背後で小さな子供が、化け物でも見てしまったかのように怯え切った顔で立ち尽くしているのが鏡越しに見える。それくらい本気で怖い。

結局私は披露宴、二次会とエレガントなワンピースにサングラスという、かなり怪しいいで立ちで臨んだ。そして写真撮影のときにはサングラスを外し、眼球が見えないくらい思いっきり細目で微笑み続けたのである。

その数年後、あのとき結婚した弟が

「久しぶりに会った友達から ”目の不自由なお姉さんは元気か?” って聞かれたよ!」と笑いながら話していた。苦笑。

こうして、バンパイア的恐怖の赤目状態のまま、1995年の夏は過ぎて行ったのでした。

 

つづく・・・

 

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