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【あの頃イタリアで その19 ミラノ美容室事情~ビートルズ降臨~】

投稿者 :佐々木英理子 on

ようやく関東地方の梅雨が明けましたね。日本の夏の暑さはなかなか堪えますが、それでもやっぱり夏は気分がいい!

そう言えば、ミラノに梅雨ってあったかな?いやいや、地中海性気候なので春夏の降水量はむしろ少なかったはず。9月の後半から10月にかけてはお天気が荒れる日がありましたが、5月から8月頃に傘をさしてミラノの街を歩いた記憶があまりありません。日本ほど湿気でべとつかないし、夜は9時過ぎまで明るいし、何をするにも最高の季節です! あの頃の私もそんな季節を謳歌しておりました・・・

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1994年の夏も終盤、私は9月末に行われるイタリア語講座最終試験に向けて猛勉強をしていた・・と、言いたいところだがやはり相変わらず遊び回っていた。その頃になると行動範囲も広くなり、ブレラ美術館や映画館、ナビリオ沿いのマーケット、ミラノ郊外のイケアにまで繰り出した。イタリアに来て初めて美容室に行ったのもこの頃である。

長めのショートカットヘアで日本を出発してから早3カ月が過ぎ、それはもはやショートカットではなく、かと言ってセミロングでもなく、ただただ伸び放題のショートカットになってしまった私。見方によってはちょっと怪しい東洋人である。ある朝まじまじと鏡を見ながらこれは本格的にマズいと思い、良美さんに聞いてみた。

「ねえねえ、髪切りたいんだけど、どこかいい美容室ないかな~?」

「だったら "Jean louis David(ジャン・ルイ・デイビット)" がいいんじゃない?」いつも通り即答。

ジャン・ルイ・デイビットはヨーロッパでは有名な美容室で、フランスとイタリアを中心にたくさんのチェーン店を展開している。ミラノ中心部にも数店舗あるし、何よりもそんな有名店ならミラネーゼ的なかっこいいヘアスタイルにしてくれるに違いない!と確信し、鼻息も荒くミラノ大聖堂そばのお店を予約した。

当日、ドキドキしながらドアを開けた私を迎えてくれたのは、何ともスタイリッシュなお兄様。数人いる美容師さんは全員、シャツもパンツも靴も全てブラックでキメている。挨拶もそこそこに、これまたダークカラーのインテリアで統一された店内の奥にあるシャンプー台に案内され、ガチガチのまま腰を下ろし、背もたれに身を預ける。そこで何やら見たことのない "U字型便座" のような形状の洗面台に首を押し付けられ、そのままほぼ垂直の状態でいきなり頭にシャワーを掛けられた。

"ギャ~!服の中に水が入る~!" 案の定背中を一筋の水が流れる・・が、大部分はU字型便座が受け止めているので怯えるほどの量ではない。しかし、水は入る。

それでも何とか我慢をしてシャンプーを済ませ、衝撃で膝がガクガクのまま鏡の前に連行される。と、そこにメニューを持った女性が・・

「お昼ご飯何か食べます?それとも飲み物にします?」

「へ??い、い、いりません。」

突然のことに "ノー、グラッツエ " としか答えられなかったが、その後観察したところ、どうもお昼になると迎えのカフェの店員さんがオーダーを取りに来るようなのである。先にオーダーしたのか、私の横のおば様はパニーニにかぶり付きながら頭にロットを巻いてもらっている。

あまりの勝手の違いに完全に” 場に飲みこまれている私。お兄様はそんな私を気にも留めず適当にカット用のケープを被せ、適当に首元のマジックテープを止め、淡々と作業を進める。

「どのくらい切りますか?」

「え~と、こんくらい?」耳元に手を垂直に当て、希望の長さを示した。そしてそこでハタと気付いた。

"あれ?・・・チョッキリでなく裾に向かって徐々に、自然に段を入れてくださいって、イタリア語で何て言うの? え? あ? う?"

とあがいているうちにお兄様は "後はお任せあれ!"とでも言うように、自信満々にジャンジャン髪の毛を切り落として行く。

"ちょっと待ってちょっと待って!なんかイメージ違うんだけど!"・・・と言えない私。

おまけに切った髪の毛はほぼ留まっていないケープの首元からジャンジャンとシャツの中に入り、シャンプーで濡れた背中に貼り付き、それでも余って腰の辺りに溜まって行く。壮絶・・(泣)

そして・・カット終了・・・。

「オーケー?!」私の肩に両手を乗せ、鏡越しに見るお兄様の満面の笑み。

「は、は、はい・・・」感動しているように見えないでもない引き攣り顔の私。

放心状態で鏡を見つめながら思う。" このヘアスタイル・・何て言うんだっけ?"・・そして思い出す。

" そうだ・・マッシュルームカットだ・・・これは・・・"

" お前はビートルズか~!!"と突っ込む気力も無い・・・

 

かっこいいミラネーゼ風ショートカットになるはずだった・・・。マッシュルームカットはビートルズだからかっこいいのだ・・・。丸顔の私は本物のマッシュルームになってしまった。

がっくりと肩を落として美容室を後にし、とぼとぼ歩くその腰辺りで切った髪の毛がわさわさと揺れる。

「ただいま~」「お帰り~」こそこそと自分の部屋に引きこもろうとする私を呼び止め、良美さんは真意不明な笑顔で言う。

「あ~ら!かわいい!」

" 違う・・違うんです・・こんなはずではなかったのです・・・・" と言い訳をする気力も無い。あ~明日学校で何て言われることやら。

 

つづく・・・

※この思い出話の舞台は1994年-1996年のイタリアです。スマホはおろか携帯電話やデジカメ、パソコンすら一般家庭に無い時代であり、主な通信手段は国際電話かFAXでした。

 

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