こんにちは!皆さん、良い連休を過ごしていますか?昨日まであんなに暑かったのに、突然秋になりましたね。来ちゃいましたね・・・食欲の秋!毎年思うのです。夏に思いっきり痩せておいて秋にモリモリ食べよう!・・・で、結果、年中モリモリ食べている私です(笑)
さてさて、シチリア一人旅、ヌッチョと出会ったその後をどうぞ・・・
------------------------------------------------------
翌日、やっと居場所を見つけた安心感からか、朝ごはんも食べずに眠り続けた。2階にある部屋のカーテンの隙間からは10月とは思えないほど眩しい光が差し込んでいる。枕元の時計はもうとっくに11時を回っているし、いくら何でもそろそろ起きないと1日がもったいないな~でも眠いな~とベッドの上でゴロゴロしていると、何やら窓の外で声がする。動きを止めて良く耳を澄ますと、どうもその声の主はヌッチョらしい。
「エリコ~!エリコ~!起きろ~!お前はいつまで寝てるんだ!昼ご飯食べるから早く降りて来~い!」
え?そんな約束したっけ?と思いつつ窓の外を見るも、その姿は見えない。一体どこで叫んでいるんだろ?しょうがなく寝ぼけ眼でざぶざぶと顔を洗い、ほぼ起きたままの格好で廊下に出た。廊下に面した窓から下を覗いてみると、見上げるヌッチョと目が合った。え?廊下越しに叫んでたの?!どんだけでかい声なのだ!
「お~い!まだか~?!」
「分かった分かった!今行くから!」
小走りに階段を降りホテルの外に出ると、それを見届けるが早いかヌッチョは手招きしながら歩きだしている。ズンズンズンズン速足で歩くじいさんの後ろを、半寝ぼけ状態の私はヨロヨロとついて行く。どうやら町の高台にある自分の家に向かっているようだ。
ヌッチョの家に続く道↓
道すがらヌッチョはいろんな人に声を掛け、いろんな人がヌッチョに声を掛ける。
「ダニエラ!今日もいい天気だね!」
「あらヌッチョ!今日も元気そうね!」
「ヌッチョ!その子は誰だい?どこから来たんだい?」
島中の人が知り合いだ。
短いメインストリートの突き当りにある教会の左側、古い石畳の小道を上って突き当りを右に折れ、更に左に曲がって真っすぐ上ると、Y字路の先に島の裏側の海が見えて来る。そのすぐ左手がヌッチョの家だ。島の一等地とも言える高台に建つ古く味わい深い家。
さび付いた門扉を押し開けると大きなイチジクの木が生えるほったらかしの畑があり、玄関前には海を見渡せるテラスがある。その上の錆びた鉄製のパーゴラにはこれまたほったらかしのぶどうの葉が生い茂っている。色褪せたコーラルピンクの外壁が剥げかかったその家は、アンティークと言えばアンティーク。ボロ屋と言えばボロ屋。どっちにしろ、私はこの家が大好きだ。
海が見えるテラス↓
開けっ放しの玄関を入ると、ヌッチョはそのまま奥のキッチンでスパゲッティを茹で始めた。
「すぐできるからテラスの椅子にでも座って待ってろ!」
「は~い」言いなりである。
しばらくしてテラスのテーブルにドン!と置かれたのは、ゴルゴンゾーラがトロケて絡みまくる大量のスパゲッティ!
「うわ~!美味しそ~!」
「美味しそうなんじゃない!絶対に美味しいんだ!」
本当に美味しい!ゴルゴンゾーラは独特の臭みが苦手だったけど・・こんなに美味しかったっけ?そしてまたどうしてこんなに白ワインに合うんだろう!
ひとしきり空腹を満たして一息ついたとき、ヌッチョは言う。
「お前、このスパゲッティソースをどうやって作ったか知ってるか?」もちろん知らない。
「これはな、モッツアレラチーズが入ったバケツに俺の足を一晩漬けておくと出来上がるんだ!」満面の笑みだ!この手のギャグは世界共通らしい。苦笑い。
その夜も、次の日の昼も夜も、またその次の昼も夜も、ヌッチョは私を捕まえてはご飯を作ってくれた。ホテルのオーナーに「たまにはうちのレストランで食べてよ~」と愚痴を溢されるほど(笑)お陰でこの島ではほとんど食費を使っていない。決して高価な食材を使った手の込んだご馳走ではないが、毎日現地の手作りご飯が食べられるなんて!なんて幸せ!なんて贅沢!
自宅前でウェルカム風ヌッチョ↓
この旅から数年後、どうしてあのときあんなにご飯を食べさせてくれたのかとヌッチョに聞いてみたことがある。ヌッチョ曰く、貧乏そうな身なりで島に一人でやって来て、BAR(バール)もまともに探せない私のことが可哀そうでならなかったそうだ(笑)
さて、次回はエンツォとの楽しいダイビングの巻です。お楽しみに~
つづく・・
※この思い出話の舞台は1994年-1996年のイタリアです。スマホはおろか携帯電話やデジカメ、パソコンすら一般家庭に無い時代であり、主な通信手段は国際電話かFAXでした。