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【あの頃イタリアで その10 イタリア語講座のクセが強い面々】

投稿者 :佐々木英理子 on

こんにちは。西日本が早くも梅雨入りしましたね。関東は来週からの天気予報に雨マークが増えてきました。今年の梅雨は長くなりそうですね~。カビ対策大丈夫ですか?今のうちにお掃除しましょう。お風呂場と・・人間もね!(笑)

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さて、無事に次の住処を見つけた私。あと少し待ってくれれば良美さんのアパートメントから晴れ晴れとした気持ちで学校へ通えるのですが、そう上手い具合にはいきません。2度目の引っ越しを控えた1994711日、10月から始まるデザインスクールの新学期を前に、留学生を対象とした3ヵ月間の集中イタリア語講座がスタートしました。

初登校の日。予想はしていたものの、今だまともに会話をしていない同居人のイスラエル人カップル女子も登校のもよう。男子の方は既にイタリア語がペラペラであったので受講を免除されたらしい。同じ家を出て同じ場所に行くであろうというのに知らんぷりし続けるには無理があるとお互いに察し、何となく一緒にトラムに乗り込んだ。片言のイタリア語で「学校に行くんだよね?」「うんうん」的な会話を交わした後、女子が思い切ったように何か長文で話しかけて来たが、対する私は全く意味が分からず豆鉄砲を100発食らった鳩のような顔をしている。彼女はその平べったい鳩顔を彫の深い顔でマジマジと眺めた後、おもむろに両手の掌を空に向けて肩をすくめた。アメリカのドラマでしか見たことがないあのポーズ!そして敗北感・・。

約20分間の修行的沈黙の後、トラムはようやく学校近くのチンクエジョルナーテ広場横の停留所に到着した。私たちは微妙な距離感を保ちつつ学校の門をくぐり明るい中庭を抜け、恐る恐る2階の教室のドアを開けた。

「Hi!」「ハアーイ!」「ハア~イ!」いきなり向けられた複数の視線の圧力!救いを求めて泳いだ目のその先で、面談の日に話しかけて来たイケメン2人組、韓国人のポールとイスラエル人のサールが相変わらずニコニコと手を振っていた。「良かった~!同じクラスなんだ!」一度会ったきりにも関わらずなぜかこの2人の呑気とも取れる雰囲気に和む。

クラスメートは私を入れて総勢12人、その内訳はイスラエル人4人、韓国人3人、アメリカン人1人、トルコ人1人、ギリシャ人1人、スウェーデン人1人、そして私。1994年と言えばバブル崩壊後の影響が顕著に表れて久しい頃、寂しいことに日本人留学生は私1人であった。

授業は午前9時半から午後1600まで。授業中はイタリア語以外の言語は使用禁止なのでさすがにみんな静かに勉強していたが、午前午後1回ずつの15分休憩と1時間のランチタイムになると堰を切ったかのように英語が飛び交う。そんな中、イタリア語はおろか英語も中1レベルの私は何とかしてみんなと仲良くなりたいという一心で精一杯奮闘していた。話したい事10割のうち9割がジェスチャーという荒業ながら何とかコミュニケーションが取れていたのだから不思議である。私は結局2年間イタリア語が上手に話せないままであったのだが、その要因の1つはこのとき身に着けたジェスチャーコミュニケーションの弊害だと今も信じて疑わない。それでもランチタイムの1時間は長く、苦痛であり、物静かな日本人にならざるを得なかった。だってピザやフォークで両手が塞がるということは、猿ぐつわをされるのと同じなのだから。

私がヒョンギョンと初めて言葉を交わしたのは、いつものランチを済ませた昼下がり、イングリッシュコミュニケーションに疲れ、みんなより先にバール(カフェ的なお店)を出た私が1人で構内を散策していたときのことである。本格的に学校が始まるのは10月からなので、7月の構内は太陽のジリジリという音が聞こえるほど静まり返っていた。ぐるり見渡すと中庭に面した陽の当たらない側の教室に何やら人影が見える。ふと興味本位で中を覗くと、ヒョンギョンが1人、窓に背を向けて椅子に腰かけている。彼女はクラスメートの韓国人。23歳とは思えない落ち着いた風貌と飾り気のないショートヘアと丸眼鏡が印象的であった。

 

つづく・・

※この思い出話の舞台は1994年-1996年のイタリアです。スマホはおろか携帯電話やデジカメ、パソコンすら一般家庭に無い時代であり、主な通信手段は国際電話かFAXでした。

 

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