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【あの頃イタリアで その13 その怒りエトナ山の如し】

投稿者 :佐々木英理子 on

さて、深夜の酔っ払いとなる一週間前の土曜日、私はめでたくイスラエル人カップルとの同居から解放され、スーツケース一つで良美さんのアパートメントに転がり込んでいた。(??という方はブログその6をご覧ください)

それまで勝手が分からず買い物も満足にできなかった私は、待ってましたとばかりに良美さんを買い物に付き合わせ、既に底が尽きていたシャンプーや歯磨き粉などの日用品を買い込んだ。

「ねえねえ、これってコンディショナーって書いてあるの?」イタリア語どころか27歳にして敬語すら満足に使えない私は偉そうに10歳年上の人に質問をする。

「うんそれコンディショナー。あなたは髪の毛硬そうだからこっちがいいわよ。こっちにしなさい。」私の言葉遣いなど気にも留めない良美さんはきっぱり言い切る。

「は~い」

「ねえねえ、これって歯磨き粉だよね?」ハンドクリームだったらやだなと思い、また良美さんに聞く。

「うんそれ歯磨き粉。こっちの方がいいわよ。これにしなさい。」きっぱり。

「は~い」

断固とした意思がある人と流されるがままの人。白黒はっきり付ける人とグレーゾーンを漂う人。そんな二人だから二年も一緒に暮らせたのだと思う。兎にも角にも、良美さんという言葉が通じる同居人兼、道先案内人と出会い、私は急速にミラノでの生活に馴染んで行った。

こうして生活上の不安が無くなり、留学生活を楽しめるようになったことへの安堵の気持ちがそうさせたのかどうか・・とにかくその日は飲み過ぎたのである。

ミラノ中央駅で悟君と別れ、良美さんが眠るアパートメントに辿り着いたのは夜中の3時位だったろうか?あまり良く覚えていない。家までの道すがら、タクシーの運転手さんと未だかつてないほど流暢にイタリア語で話していた気がする。無事に帰宅をして冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出してがぶ飲みし、倒れるようにベッドに横になった。

その後、朦朧とする意識の中、物凄い吐き気と頭痛に襲われた。と、夢か現実か、霧の彼方から天女のように良美さんが現れ、私の背中を摩りながら塩水を飲ませてくれた。そしてまた記憶喪失。

そして翌朝、いや翌昼、窓から差し込む強い日差しに焼かれるようにして起こされ、気付いたら洗面器と仲良く添い寝をしていたのである。

「あ~~やってしまった~・・」記念すべき(?)イタリア上陸後初の二日酔い。

先ずは良美さんに酔っぱらって帰ったお詫びと介抱をしてくれたことへの感謝の意を伝えねばならない。私はベッドにめり込みそうなくらい重い身体を起こし、手の平で前頭部を支えながら隣のリビングルームに向かった。

「あら?大丈夫?まだ寝てていいのに」

「昨日は酔っぱらってしまって・・お世話までしてもらって・・ごめんなさい・・」

「たまにはいいんじゃない?お友達と一緒できっと楽しかったのね!」笑顔である。

なんて優しい人なのだ!海のように広い心に感動する私。が、この後、私の一言で良美さんが豹変する。

「あの時間までどこで飲んでたの~?お友達の家?」と良美さん。

「え~と、12時位まで友達んちで飲んで、それからミラノ中央駅の横のバールで飲んでた。あそこって遅くまでやってて便利だね~!」と笑顔で返す私。

と、そんな私の顔をマジマジと見つめる良美さんの眼がドンドン大きく見開かれて行く。私は何かを察し、振り回していた尻尾を徐々に下げて行く。その間約5秒。

「・・・・・・え?・・・・・あの時間に?!・・・・・中央駅?!」

これは明らかにマズい!・・・と思った瞬間、良美さんは鬼のような形相で流れ出るマグマの如く一気にまくし立てた。

「あーなーたーねー!!一体あの場所がどんなに危険なところか知ってるの?!昼間でも犯罪者や麻薬中毒者がうろついて注射針があっちこっちに落ちてるし犯罪もたくさん起きてるところなのよ!暗くなったら絶対近付いちゃダメなの!イタリア人も近寄らないところなのよ!!一体何考えてるのよ~!!」

もはや死んだふり。

「あなたが私の子供だったら今頃とっくにひっぱたいてるところよ!!」

と、良美さんは締めくくって背を向けた。

 ・・・撃沈。

「あ~あ・・やってしまった・・」本日二回目の懺悔。私はすごすごと部屋に戻り、二日酔いを理由に早々にベッドに入った。こういうときは寝るに限るのである。

 

つづく・・・

※この思い出話の舞台は1994年-1996年のイタリアです。現在、ミラノ中央駅周辺は綺麗に整備され、過去の暗いイメージは一掃されています。コロナ渦以前は週末になると駅前広場に小さなマーケットが立ち並び、人々を楽しませていたようです。

 

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