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【あの頃イタリアで その23 隣のシスター in 寝台列車(2)】

投稿者 :佐々木英理子 on

お盆休みの真っ只中、日本各地で大雨の被害が出ていますが、皆様がお住まいの地域は安全でしょうか?くれぐれもお気を付けてお過ごしください。大事に至らないことを心より祈っております。

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さて、シチリアの旅は前回からの続き・・・

 

「あなたは仏教徒ですか?」と聞かれ、「何も信仰していません。」と答えた私にシスターは小さく驚き、即座にこう告げた。

「信仰を持たないのはいけません!人は必ず信じるものを持たなければならないのです!では私がこれからあなたにキリストの教えを授けるので、よ~く聞いてください!」

シスターは唖然としている私を余所に、ベッドの上で居住まいを整え静かに話し始めた。それはキリストの誕生から始まり・・・果たしてどこで終わったのか・・・約30分後、彼女はようやく力んだ肩を下ろし、「分かりましたか?」と私に微笑んだ。

はたと我に返り「あ、はい!70%くらい理解できました!」と作り笑顔の私。

・・・なぜ?・・・一体なぜ私はそこで100%分かったと言わなかったのか・・・バカ正直な自分が憎い。

シスターは神妙な面持ちでゆっくりと頷き、意を決したようにこう言った。

「分かりました。ではもう一度初めから、今度はもっとゆっくり丁寧に話しますね。」

う、う、嘘でしょ?!・・なんとそこから約1時間の説教。尊くも長ーい長ーいシスターのお話をどこか遠くに聞きながら、その昔日本に布教活動をした宣教師の方々に思いを馳せる。信じるものがある人はこんなにも根気強くなれるのか・・。

 

大仕事を終えるとシスターはまた私に確認する。

「これでキリスト教のことが理解できましたか?」その笑顔は自身に満ち溢れている。が・・・イタリア語も満足に分からない私に理解できるはずがない。そして意を決した。神に仕える方に嘘をついてしまうことになるが、もはや私に選択肢はない。

「はい!もちろん!100%理解できました!ありがとうございます!」

シスターはにっこりと微笑み、「ではお休みなさい」とようやくカーテンを閉じた。

ああ・・何てことだ・・・時計は既に夜中の2時を回っている。これはマズい!うかうかしていると列車が海を渡ってしまう!いっそのこと起きていようかな?どうしようか?・・とワインを飲みながら考えているうちに眠りに落ちてしまったようである。

 

そして・・朝。

「起きなさい!もうすぐメッシーナに着きますよ!」シスターの声に飛び起きる私。

2回目の)う、う、嘘でしょ~!・・・列車の分解シーンは?いつ分解したの?もう分解されてるじゃん!・・・ひたすら絶望。

それから間もなく、ガタガタと車両が横に揺れ始め、ガチャンガチャンと金属音がする。これは車両を連結する音だ。このとき、私は完全に戦意を失っていたらしく、写真を一枚も撮っていない。それどころか寝台列車の写真が一枚も無いのである。

フェリーの扉が開いたのか、暗かった車内はみるみるメッシーナの朝の光に満たされて行く。

あー!シチリアだ!何はともあれシチリア島への上陸を果たした。ここで列車はパレルモ行きとシラクーサ行きに別れるが、まず私が目指すのはゴッドファーザーの聖地パレルモだ。頭の中では既にパパパパパパパパパパパパ〜♪(←愛のテーマのつもり)が鳴り響いている。

メッシーナからパレルモまでは列車の右手にティレニア海を眺めながら約4時間の絶景の旅。いよいよだぞパレルモ!待ってろよ〜!寝台列車での失敗は何処へやら、絶景を見逃すまいと一人鼻息荒く列車の窓にへばり付く私であった。 

つづく・・・

 

※この思い出話の舞台は1994年-1996年のイタリアです。スマホはおろか携帯電話やデジカメ、パソコンすら一般家庭に無い時代であり、主な通信手段は国際電話かFAXでした。

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