大変長らくお待たせいたしました!イタリアブログ再会です。もしかしたらもう忘れられてしまったのではないかとやや焦り気味です。(汗)
では早速、今回はイタリアで初めて行くことになった歯医者さんのお話し・・・
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初めて迎えるイタリア、ミラノでのクリスマス・・・のはずが、日本食の誘惑に負けた私は“学校の課題の資料集めをしなければいけないのだ!”とかなんとか理由を付け、親からお金を借りて日本へ帰った。なんて意思が弱いのか・・・。留学中にたった二回しか迎えることのできないミラノでの貴重なクリスマス体験、その一回を棒に振ってしまったのだ。今でも悔やまれて仕方がない。
日本を旅立つ前に友人たちと盛大に別れの宴を重ねていた手前、わずか半年足らずで帰国することにした私は “日本食が食べたくて帰って来ちゃった!” とおどけて見せる訳にもいかず、お忍びの如くこっそり成田に到着した。
「あんたが物凄く太って帰って来る夢を見たのよ~」と言っていた母は、意外にもほっそり痩せて帰って来た私が不憫だったのかどうか、これでもか!とたんまり美味しいご飯を食べさせてくれた。
そして食べ続けること約三週間、半年分の日本食を細胞に蓄えた私は、またこっそりミラノへ帰って来た。 “ホントに食べるためだけだったのね”と言われても一切反論できない。今も尚変わらぬ衝動的意志薄弱さ加減に、我ながら呆れてしまう。
冬休みが明けると、本格的に授業が忙しくなって来た。それと同時に放課後の課外授業で取り組んでいた校内ベッドデザインコンペの締切りが近づいていたため、かつてのペンキ塗り生活のような(その35参照)慌ただしい日々が続いていた。だけどへっちゃらなのだ。なんてったって日本食をたらふく食い溜めして来たのだからパワー全開なのである(笑)
そんなある日のこと、誰かが作業に没頭する私の背中をつつく。
「ハイ!エリコ!ガム食べる?」その当時仲良くしていたモデル系美的ドイツ人女子、アルムットだ。
「うん、ありがと!」即座に口の中に貰ったガムを放り込む。もぐもぐもぐ。
「・・・ん?・・・んん?・・・・なんだこれ?」ガムと一緒に手の中に吐き出されたのはなんと・・・歯の詰め物!奥歯に入っていた銀の詰め物がガムに引っ張られて外れてしまったのだ!
「ぁぁああ~!!」
私の雄叫びに、みんなが作業の手を止めてドヤドヤと集まって来た。
「あらら~、そのまま歯医者持って行けばくっつけてくれるんじゃない?」
「いや、待て、保険入ってないから治療費がバカ高いよきっと!」
「俺、接着剤使って自分でくっつけたことあるよ~」
途方に暮れる私をよそに、みんな勝手なことを言い放つ。
その時である。黙って横で聞いていた静的ミラネーゼのクリスティーナから鶴の一声が・・・
「大丈夫、私の親戚が歯医者をしているからそこに行きなさい。きっと安くやってくれるわよ。後で電話しておくわね!」・・・神降臨!
「ほ、ほ、ほんとに?!ありがとーー!!」神様仏様クリスティーナ様である。
そしてその一週間後、私は課外授業を途中で抜け出し、クリスティーナに書いてもらった地図を片手にその病院を訪れた。院内は混んでいたにも関わらず、すぐにクリスティーナの親戚らしき女性が私を診察室に案内し、取れた詰め物を丁寧に磨いて詰め直してくれた。
「さあ、これで大丈夫よ!」天使のような笑顔である。
そして感謝を告げておずおずと会計に向かおうとした私を、彼女は全力で止めた。
「いいの、いいの!代金はいらないのよ!」女神を上回る笑顔である。
「ほ、ほ、ほんとですかー!ありがとうございますーー!」イタリア語での遠慮の仕方が分からなかったので、玄関まで見送る彼女とそのスタッフに、とにかく“ありがとう”を連発しながら病院を後にした。
学校に戻るとお調子者ミハイルがニヤニヤ顔で近づいて来る。こういう時はろくなことを言わない。
「お前さ、その格好で病院行ったの?鏡見て見ろよ!」
「へ?」言われた通り鏡を見る・・そして愕然!デザインコンペ用のベッドの模型を削っている途中で、慌てて出掛けた私の頭や服や靴は白い発泡スチロールの屑にまみれていた。
「よくこんな汚いやつを病院に入れてくれたよな~!あんまり貧乏そうに見えたから、代金払えって言えなかったんじゃないの~?クックック!」悪魔のような笑顔でミハイルは笑う。
しかし、あまりにも酷い自分の姿をマジマジと眺めながら、”もしかしたらミハイルの言う通りかも知れないな・・”と思う私なのであった。
つづく・・・
※この思い出話の舞台は1994年-1996年のイタリアです。スマホはおろか携帯電話やデジカメ、パソコンすら一般家庭に無い時代であり、主な通信手段は国際電話かFAXでした。