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【あの頃イタリアで その39 ローストチキンの儀】

投稿者 :佐々木英理子 on

メリークリスマス!良いクリスマスを過ごしていますか?やはり今日の夜はクリスマス的なものが食卓に並ぶのでしょうか?クリスマスディナーと言えば何を思い浮かべます?ケーキとシャンパン?(昭和な発想ですみません)私は迷わず“チキン!”と即答します。しかも骨付きのやつ!なにせ無類のチキン好きなもので(笑)

今日の“あの頃”はそんなチキンにまつわるお話・・・

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私が良美さんと暮らす新居の近所には“SMA”というスーパーマーケットがあった。良くあるチェーン店で、日本で言う “ サミット ” や “ピーコック ” 的な存在であったと思う。

貧困留学生活のため外食なんてめったにできなかったので、もっぱら自炊(・・と呼ぶほどの大したものは作れない)のために普段はスーパーで買い物をしていたのだが、売場に並ぶ鶏肉の値段の高さに衝撃を受けていた。

日本では食肉の中で最もお手頃な鶏肉であるが、イタリアでは牛肉や羊肉、豚肉よりも高額なのである。(1994年当時)う~む、鶏肉好きとしては納得できない。鶏肉が食べたいのにそれを我慢して牛ステーキで妥協するなんて、日本では信じがたい現象である。

「ねえねえ、なんで牛肉より鶏肉が高いの~?」と良美さんに愚痴ってみた。

「なんでだろうね~。ま、私はお肉食べないから関係ないけど~。」

そうなのです。同居人の良美さんは魚は食べるが、肉類は一切口にしない。もしやプチベジタリアン?と思われるかもしれないが、それには以外な理由がある。なんでも幼いときに悪い風を引いて高熱を出し、食欲も無く横たわっていたところ、お母さんが心配してその当時良美さんが大好物だったお肉料理を嫌になるほど食べさせたとのこと。

そして彼女はその例え通り本当にお肉が嫌になってしまったのだ。お肉が焼ける匂いも我慢できないというからよっぽどのことだ。たまに私がお肉を焼くときはドアを締め切って自室に籠ってしまうほど。

とある夕暮れ時、” お腹いっぱい鶏肉が食べたいな~”と思っていた私の目に素晴らしい光景が飛び込んできた!狭い間口なので今まで気づかなかったのか、バス通りを挟んだSMAの向かい側にローストチキンのお店らしきものが見える。

よ~く目を凝らす・・幻ではない!小さなウィンドウの奥で大きな鉄串に差し込まれた何羽ものチキンが楽しそうにクルクル回っているではないか!吸い寄せられるように通りを渡り、大きなベルが下がった扉をガランガランと押し開ける・・・と、店中に充満するローストチキンの香り!もう無理!

私は何でもない日のなんでもない夕暮れどきに、なけなしのお金を払い、自分専用のチキンを一羽大人買いをしてしまった。

レジにいた気前の良さそうなおじさんが「記念日なんだね!」と、スプマンテを一本サービスしてくれる。はい、今日は私の一人チキン記念日で~す!

帰ってから早速ダイニングテーブルの上にチキンをどかんと乗せ、こんがり焼けた皮にナイフ入刀!ダイナミックに切り取られたチキンレッグに齧り付く・・・う、う、ウマ~い!!

早い時間だったので、良美さんはまだ帰宅していない。めくるめく私とチキンだけの時間!・・・と、その匂いを嗅ぎつけた良美さんの飼い猫“サンボ”がいつの間にかテーブルの上に乗り、サイドからチキン目掛けてパンチを繰り出す。どんなにテーブルから下ろしても止めないので、サンボとチキンとの間にぐるりとバリケードを築いてみる。何か怪しい儀式の如く、ありったけのワインの瓶とグラスで囲まれたチキンに食らいつく女・・・怖過ぎる。

 

「ただいま~」良美さん帰宅。そして・・・

「ちょっと~!あなた何やってるの~!可哀そうだからサンボに少し分けでやってよ~!」

・・・そっちか!

私はしぶしぶチキンを一欠サンボに分けてやった。ガツガツ食らいつくサンボ。もっと早く分けてあげれば良かった。今思っても全くもって大人げない私。

哀れにも、良美さんと暮らしている以上はサンボが普段目にすることのない “お肉”。夢中になって奪おうとしたサンボの気持ちは、夢中でチキン屋さんに飛び込んだ私とおんなじだったのでしょうね(笑)

 

つづく・・・。

 ※この思い出話の舞台は1994年-1996年のイタリアです。スマホはおろか携帯電話やデジカメ、パソコンすら一般家庭に無い時代であり、主な通信手段は国際電話かFAXでした。
 

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