【あの頃イタリアで その43 いきなりサッカーブーム・・しかもやる方】

【あの頃イタリアで その43 いきなりサッカーブーム・・しかもやる方】

今日の関東はどんよりとした曇り空。まだまだ春は遠いのかな・・と思わせる寒い日が続いています。私は渋谷ヒカリエでのPOP-UPストアを無事に終了し、ようやく落ち着いてパソコンに向かっているところです。

さて、今日は思いがけず実力を発揮することになったサッカーのお話・・

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ベッド完成から遡ること約2カ月。ベッドデザインコンペに優勝し、メーカーがせっせと私がデザインしたベッドを作り込んでいた頃、クラスの男子の中で草サッカー(?)が一時的に流行ったことがある。言い出しっぺはいつもの箱入りマルコだ。

「なあなあ!今度の週末みんなでサッカーやろうぜ!俺の友達も連れて来るからチーム作って試合しようよ!」ある日の放課後、彼は唐突にこう切り出した。・・・気のせいか私に向かって言っている。そのまま気付かないふりをしていたら、案の定しっかりメンバーに入れられていた。

“まだ寒いのに〜面倒だな〜”とは思ったが、基本的に体を動かすことは嫌いではない。何を隠そう、私はこう見えて(どう見えて?)教育学部保健体育課の出身である。素直にスクスク育っていれば今頃は中学か高校の体育教師であったはずなのだ。もちろん球技は嫌いではない。

サッカー当日、購入したばかりのマウンテンバイクで集合場所である学校近くのグランドへ行ってみたら、ほらやっぱり、女子は私だけではないか!全くもってマルコは私が8歳年上の女子だという自覚に欠けている!と、ぶつくさ言いながらも嫌いではないので、率先して準備体操のお姉さんを買って出る。

「は〜い、両腕を前に回して〜、今度は反対側〜」

「は〜い、次はふくらはぎを伸ばしましょ〜」・・・と、突然変な声がする。

「うぎぎぎ!」

苦しそうに顔をしかめているのは同い年のお調子者ミハイルだ。彼は運動が苦手なのにも関わらず、強引にマルコに連れて来られたのだ。

「やばい!ふくらはぎ肉離れした〜~!」

準備体操ごときで負傷してしまうとは、何とも情けない28歳である。残念ながらミハイルは試合開始前にあえなくリタイヤし、応援席へ退いた。(後日、私とマルコの間でミハイル仮病説が囁かれることになる。)

マルコが適当に振り分けた、なんちゃってチーム同士のなんちゃって試合は思いの外白熱した。マルコに負けじと私も年甲斐もなく全力で走り回ってボールを奪い取る。こんなに無邪気に体を動かしたのはいつ以来だろうか?学生時代は陸上部だったので、その当時長距離走の大会に出場して以来かもしれない。

止まることなくボールを追いかけながら走り回ったので、真冬なのに汗だくになった。自分で言うのもなんだが・・いや、言ってしまおう。小さい頃からサッカーをして来た8歳下のイタリア男たちを相手に、ちびっこ日の丸女子である私の活躍振りは凄かった。ゴールこそ狙えないものの、小柄で小回りが利く分、相手の長い脚の隙間を縫ってボールを奪い取るのが上手なのである。

「お前凄いな!こんなにサッカーが上手いと思わなかったよ!」マルコに太鼓判を押された。そしてそれからというもの、私は度々マルコチームの一員としてグランドに立つことになった。

試合開始前、マルコは私を顎で指しながら相手チームに向かってこう言うのだ。

「こいつを舐めると痛い目にあうぜ!」マンガかドラマでしか聞いたことのない冗談のようなセリフだが、マルコは大真面目だ。今思い返しても笑える(笑)

ミラノに春の足音が聞こえて来た頃、サッカーブームはアルプスの雪解けのように自然に消滅してしまった。メンバーがマンネリ化したこともあり、みんな飽きてしまったのだと思う。

そして春の訪れと共に、私と箱入りマルコ、お調子者ミハイル、たまに参加の色白オスカルの間に自転車ツーリングブームが到来することとなる。相変わらず女子は登場しない(笑)

そのお話はまた今度。

つづく・・・

※この思い出話の舞台は1994年-1996年のイタリアです。スマホはおろか携帯電話やデジカメ、パソコンすら一般家庭に無い時代であり、主な通信手段は国際電話かFAXでした。
 

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