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【あの頃イタリアで その63 今度こそ”ちゃんとした”アルバイト①】

投稿者 :佐々木英理子 on

こんにちは。今日の東京は残暑過ぎるほど暑い!仕事をする気になれないのはきっと、この暑さのせいなのだ!・・きっとそうに違いない。この歳になっても 「8月いっぱいは夏休み症候群」から抜け切れない私をお許しください(笑)

さて、ミラノで2度目のアルバイト面接に行くことになった私。その続きをどうぞ・・・

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良美さんから紹介してもらった設計事務所の面接の日、私はミラノの運河沿いにあるとあるビルの前の歩道から4階の窓を見上げていた。住居とオフィスが混在しているらしいそのビルは、良美さんと暮らすアパートメントから徒歩で約15分、週末になるとマーケットが開かれる運河脇の明るい小道に面していて日当たりも良い。半年前に恐る恐るドアを開けた怪しいアルバイト先(その45参照)とは雲泥の差である。

緊張しつつもなんだか嬉しくなった私は、勢いよくメインエントランスの呼び鈴を押した。

「は~い!YOSHIMIの友達ね?どうぞ入って!」ドアのロックが開いて、言われた通り正面のエレベーターで4階に上がると、その女性は玄関のドアから顔をのぞかせて私を待っていてくれた。

良美さんの友人である彼女の名前はピエラ。年齢は40代半ばといったところだろうか?真冬なのに小麦色に焼けた肌、タイトな黒いワンピースにゴールドのブレスレット、頭の上に眼鏡を引っかけて、ちょっと気の強そうな眼差しをした彼女は、どこからどう見てもミラネーゼにしか見えない。

案内されるまま玄関正面の廊下を進み、その突き当りにある彼女のオフィスに入り椅子に腰かけた。面接の前にコーヒーを勧められたが、はやる気持ちと緊張で喉を通らない。とにかく私は何が何でもここで働かせてもらわねばならないし、絶対ここで働くのである!

面接の間、ピエラは私に多くのことは聞かなかった。実務に直接関係がある日本の設計事務所での経験や、現在の学校の授業の様子についての質問がメインだ。なんとか採用に漕ぎつけたいと、冬なのに額に汗をかきかき片言のイタリア語で必死に説明を試みること数分間。どうにか言いたいことは伝わったと思われる。それまで私の眼を真っすぐに見据え、ジッと話しを聞いていたピエラがゆっくり口を開いた。ピリリと緊張が走る。

「OK!明日からお仕事手伝って!」私の緊張を知ってか知らずか、彼女は実にあっさりとこう言い放つとにっこりと微笑んだ。

や、や、やった~!!アルバイトが決まった~!一気に肩から力が抜け落ちる。しかも今度は“ちゃんとした”職場で働けるのだ!

「グラッツィエ!グラッツィエ!うんうん!来る来る!明日から絶対来る!」私はピエラと固く握手を交わし、ツーステップを踏みながらオフィスを後にした。

アパートに帰ると真っ先に良美さんに採用決定の報告をする。

「あら~良かった!紹介したのにダメだったって言われたらどうしようかと思ってたわ!」一応は心配してくれていたようである。

「ところで、ピエラのご主人には会った?ほら、共同経営者の・・カナダ人の。」

「あ、今日はピエラだけだったよ。」・・そう言えば良美さん、そんなこと言ってたよね・・・。

「あらそう・・・。じゃあいいや。」

「え?なにが?」そんな言い方をされると気になる。

「いや・・あのね、そのご主人がとても神経質で細かいって、前にピエラが言ってたから・・どんな人かと思って。」

「・・・・え・・・そ、そ、そうなの?」

「大丈夫よ、大丈夫!ご主人と二人っきりで働くわけじゃないし!」

「そ、そ、そうだよね・・・。」・・・この類の不安は、かなり高い確率で的中するものである。

そして翌日、初出勤を明るく出迎えてくれたピエラの脇にその人は立っていた。

「紹介するわ!彼は私の夫で共同経営者のダッグよ!」口の端で少しだけ微笑んでみせたその男性はひょろりと痩せて背が高く、こけた頬と眉間に寄せた深い縦ジワはどこからどう見ても“神経質な人”にしか見えない。そしてピエラは涼しげに微笑みながら私に驚愕の事実を告げるのである。

「私は外の仕事が多くてほとんどオフィスに居ないから、あなたはダッグの指示に従ってお仕事してね!よろしくね!」

・・・ほらね。やはり世の中、そう甘くはないのだ。

 

つづく・・・

 

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