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【あの頃イタリアで その65 日本人ならできるでしょ?③】

投稿者 :佐々木英理子 on

こんにちは。最近は期間限定ショップに立ち会っているので、ブログの更新が予告なしに不規則になってしまってすみません!

では早速、"ちゃんとしたアルバイト"の続きをどうぞ・・・

新しいアルバイトシリーズ①はこちらから

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あっという間に就業時間の午後6時。

結局その日は図面に書かれている等高線を発泡スチロールに書き写す作業で終わってしまった。(もちろんこの時代に3Dレーザーカッターなるものは無い。)

「時間なのでそろそろ帰っていいですか?」廊下からそう呼びかけると、すぐにダッグがオフィスから顔を出した。

「で、どこまでできた?」眉間に皺を寄せてそう尋ねる彼に等高線を書き写した発泡スチロールを差し出す。

「ふ~ん、これ作るのはそんなに難しい?」やや不満気に見える。

「すんごい難しい!」“そりゃそうでしょう!”と心で呟く私に彼はこう言い放った。

「だけどできるでしょ?日本人はこういうの得意でしょ?」真顔である。

「・・・。」

ややうつむき加減で帰宅した私は、食卓でアペリティーヴォ(食前酒のこと)のワイン片手に、良美さんに今日の出来事を話した。一気に話し終わってワイングラスに口を付けると、笑いながら話を聞いていた良美さんが口を開いた。

「困ったものね〜。イタリア人は日本人を見るとすぐに模型を作らせたがるのよ~。」

「!!え?!そうなの?!」

「日本人て器用だからイタリア人が作るより細かくて上手な模型を作るらしいの。日本からやってきて設計事務所で見習いをすると、まず初めに模型作りを任せられるんだってさ!そっか~、ピエラんとこも模型作ってもらいたかったんだね〜!」とケラケラ笑う。

私は全然笑えない。

そしてその翌日、今日もピエラは不在。ダッグと二人きりだ。その日は授業が無かったので朝から模型に取り掛かる。発泡スチロール上面に書き写した等高線に沿って側面に描いた丘の断面。今日はその曲線に沿って発砲スチロールの塊をカットしていくのだ。

曲線を描いた面を上にし、ドキドキしながら巨大な電熱線カッターのスイッチを入れる。電熱線が温まった頃合いを見て、まずは小さな発泡スチロールの破片を試し切りしてみる・・・と、電熱線にあてた瞬間、気持ちがいいくらいスッと切れた。冷や汗が出る。これは手際よくスムースに手を動かさないと予期せぬ方向にスッパリ切れてしまうに違いない。そんなことになったらもう一度発泡スチロールの塊を調達してもらわねばならなくなる・・・と思った瞬間、不機嫌なダッグの顔が脳裏を横切る。

“よ~し!”深く深呼吸をしてから意を決して塊に電熱線をあてる。手を留めてはいけない。同じスピードで慎重に塊を動かし続ける。切り絵をする人がハサミを動かさずに手に持った紙だけクルクル回して模様を描いて行くが、その3Dバージョンともいえる作業だ。

“いい感じいい感じ!”丘のてっぺんから切り込み、別荘の下のプールの辺りまで一気に進む。“この調子だ!”と思ったその瞬間であった。“バチン!!”大きな音が作業室に響いた。

???一体何が起きたのか・・・よ〜く目を凝らして手元を見る・・・と、

“ああ~!!電熱線が切れてしまったああ~~!!”

力を入れ過ぎてしまったのだ。電熱線がギターの弦の如く切れて弾け飛んでいる。こ、こ、これはマズい。しばし放心状態になるもどうしようもない。勇気を振り絞り、恐る恐るダッグのオフィスのドアをノックする。

「はあ?電熱線切れたの?無理して押すとすぐ切れるんだから気を付けて!」ダッグはそれ以上喋らずツカツカと作業室に入ると、眉間にシワを寄せたままカッターに新しい電熱線を張り直し、終始無言のまま部屋を出て行ってしまった。ホントに感じが悪い。

確かさっき、すぐ切れるって言ってたよね?また切れたらどうしよう・・・ ダッグが作業室を去った後もなかなか作業に取り掛かることができない。しかし・・・やらねばならぬのだ!なんとか気持ちを奮い立たせ、再び作業を開始。既にカットした位置まで予め電熱線を差し込み、そこでスイッチを入れた。しばし温まるのを待って再び手を添えてゆっくり塊を動かしていく。

“よしよ~し、今度こそいい感じ~!”と思ったそのとき・・・“バチン!!”またしても鳴り響く嫌な音!

“ああああ~~!!また切れてしまったああああ~~~!!!”

惨劇の始まりであった・・・。

 

つづく・・

※この思い出話の舞台は1994年-1996年のイタリアです。スマホはおろか携帯電話やデジカメ、パソコンすら一般家庭に無い時代であり、主な通信手段は国際電話かFAXでした。

 

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