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【あの頃イタリアで その68 鬼のかく乱的2度目の病院 】

投稿者 :佐々木英理子 on

こんにちは。気持ち良いお天気が続いていますね!行楽の秋、スポーツの秋、食欲の秋、ブログサボりがちの秋・・・秋はいろんな理由になり得るようです(笑)

さて今日はミラノに来て2度目の病院のお話・・・

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19962月、とある昼下がりの教室。この日も卒業設計チームの4人は腕組みをして図面とにらめっこをしていた。

課題として与えられたその建物は5階建。まずは大まかなデザインコンセプトを決めて、各フロアの用途を決める必要があるのだが、これがなかなか決まらない。どうやら今日もこのまま日が暮れてしまいそうである。そして夕方、案の定その日も何も決まらず、結局それぞれで考えて1週間後にプランを持ち寄ることになった。

その日の夜、いつものように同居人の良美さんと食卓でワインを飲んでいると、気のせいか喉の調子が悪い。何だか体もだるいような気がする。大事を取って早めにお風呂を済ませ、ベッドに入ると今度は寒気が止まらない。そしてみるみるうちに熱が出て激しいのどの痛みに襲われ、一睡もできないまま朝を迎えた。

「タクシー読んであげるからすぐに病院に行っておいで!」

翌朝、良美さんに言われるままにヨタヨタと上着を羽織り、到着したタクシーに乗り込んだ。病院の住所が書いてあるメモを渡すと、私のぐったりした様子と住所を見比べ、“なるほど”と思ったのか、運転手のおじさんはそのまま黙って車を走らせた。

目的地の前に到着すると、親切にも診察が終わるまで待っていてくれるという。よっぽど私が哀れに見えたに違いない。

イタリアに留学して2度目の病院(1度目はこちら)は、良美さんの大学時代の先輩が営んでいる小さな診療所であった。看護師はおろか助手らしき人間も見当たらず、日本人の女医さんが一人いるだけの小さな小さな診療所。

「ただの風邪だねー」

一通り検査をすると彼女は聴診器を耳から外し、そう診断をくだした。

「ちょっとたちが悪い風邪を引いちゃったみたいね。お薬出しておくからしばらく様子を見て、良くならなかったらまた来てくださいね。」

ただの風邪と聞いて安心したものの、体の調子はすこぶる悪い。処方箋を片手に、待っていてくれたタクシーに再びヨタヨタと乗り込んだ。

しばらく車を走らせると、バックミラー越しに私の様子をチラチラ見ていた運転手のおじさんが不意に話しかけてきた。

「大丈夫かい?大変な病気なのかい?」

「・・・いえ。お医者さんは風邪だって言ってる。」

「・・・・へ?!風邪?!」・・・と、少し間をおいてからおじさんは突如としてゲラゲラ笑い出した。

「日本人は風邪引いたくらいで病院行くのかい?!イタリア人は風邪くらいじゃ病院なんて行かないぞ!」

「え?だ、だ、だけどすんごい喉痛いし鼻から息できないし・・・」

「そんなのはな!お風呂にゆっくり入って熱々のホットミルクにブランデーを垂らして飲んで寝れば次の日には良くなってるさ!帰ったらやってごらん!」

「は、は、はい・・・」

ただの風邪と聞いて安心したのか、その後も家に着くまでおじさんは上機嫌で何かしゃべり続け、「ブランデーミルク忘れずに飲めよ!」そう言い残して去って行った。

帰宅してすぐに、まずはもらった薬を飲む。大酒のみの私だが、さすがにこの状態でブランデーは・・・と思ったが、ちょっとだけ気になる。おじさんを信じてカップ3分の1くらいのホットミルクにちょっとだけブランデーを入れて飲んでみた。案の定・・・全部吐いた・・・。

結局私はその日から丸3日間寝込んだ。今思えばきっとそれは風邪だけではなく、風邪をきっかけに今までのいろんなストレスと疲労が一気に爆発してしまったに違いなかったのである。

 

つづく・・・。

※この思い出話の舞台は1994年-1996年のイタリアです。スマホはおろか携帯電話やデジカメ、パソコンすら一般家庭に無い時代であり、主な通信手段は国際電話かFAXでした。

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