皆さん、こんにちは。もうこのブログのことは忘れてしまったでしょうか?(汗)と思わざるを得ないこの不定期な書きっぷり。毎度毎度のことですが、お待たせしてしまい大変申し訳ございません!
卒業旅行計画はその後どうなったのか?続きをどうぞ!
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“訳”あって(前回参照) 卒業旅行の日程をズラしてもらってから一週間後のことである。
卒業設計のグループ作業をしている教室に、マルコが珍しく遅れて入って来た。いつも穏やかな丸い目が心なしか横に潰れた楕円形に見える。
明らかにいつもと比べて口数が少ないマルコ。しかしそのことには触れないまま黙々と作業をすること数時間。ようやくその日の課題を終え、他の卒論メンバーが教室を出て行ったその時、マルコが顔も上げずに強い口調でこう切り出した。
「ミハイルが、ミハイルが旅行に行けないって言うんだ!」
「え?なんで?」
「日程がズレたから行けなくなったっていうんだ!」
「え~!私のせいで日程がズレたから?なにか大事な予定でもあるのかなー?」
よっぽど怒っているらしく、マルコは顔を上げないままこう続ける。
「絶対違うよ!あいつ、初めから自転車旅行になんて行きたくなかったんだよ!なんか様子がおかしいと思ってたんだ!日程がズレたのを口実に、行くのを止めたんだよ!」
「え・・・そんな・・・だって楽しみにしてる感じだったよね・・」と私が言い終わらないうちにマルコは更に続ける。
「あいつ、前からスポーツが嫌いなんだよ!サッカーのときだってそうだよ!あいつ一回でも試合に出たか?!」
・・・う~む、確かに・・・そういえば仮病疑惑が浮上したことがあったっけ。(その43参照)
「週末に自転車漕いでるときだってそうだ!いつも“疲れた休もう”って言うのはあいつだよ!あいつはオレが卒業旅行計画を提案したときから行く気なんてなかったんだよ!」
学校からの帰り道。トラムの中で揺られながら、マルコの言葉が頭から離れなかった。“あいつはオレが卒業旅行計画を提案したときから行く気なんてなかったんだよ!”・・ あんなに楽しくみんなでテントや寝袋探しに行ったのに・・・。
翌日の昼下がり、ミハイルが笑顔で私たちの教室にやって来た。それを横目で見るなりマルコは無言のまま教室を出て行ってしまった。あんなに怒っているマルコを未だかつて見たことがない。それとは裏腹に、目の前に立つヘラヘラ顔のミハイル。 “これは何としてでもその理由を問いたださねばならない!” と心に決めた瞬間、ミハイルが先に口を開いた。
「あのさ~、マルコから聞いたよね?残念だけどオレ、旅行に行けなくなっちゃったんだ。」
全然残念そうに見えない。
「なんで?あんなに楽しみにしてたじゃん!」
「突然決まっちゃったんだけど、ここ(ミラノのデザイン学校)が終わったら、ロンドンのデザイン学校に行くことになったんだ!ラッキーなことに奨学金を貰えることになったんだよ!そんな簡単に貰える奨学金じゃないんだぞ!ホント、ラッキーなことなんだ!」
卒業旅行に行けないことよりも、ロンドン留学が決まった喜びを、顔を紅潮させながら話すミハイル。
それをジッと聞いている私はといえば・・・ショックだった。説明しがたいショックを受けた。この頃はこの時のモヤモヤした負の感情を言葉にすることができなかったが、今なら言える。
“あんなに今まで一緒に楽しく遊んで来た”仲間“なのに・・もうすぐ離れ離れになるというのに・・そのフィナーレを飾る大イベント、卒業旅行よりも大切なものがこの世にあるって言うの? しかも私たちとは全く関係のないロンドン留学。それが私たちの友情よりも大切なことだって言うわけ?”
大切な親友だと思っていたミハイルは、自分たちが思うほど自分たちのことを大切だと思っていなかった。簡潔に言うと“片思い”。つまりこの感情はある種の“ジェラシー”だ。
「オーケー!もう分かった!」
自分の感情を整理することを知らなったこの当時の私は、たった一言こう告げ無造作にカバンを掴むと、ミハイルを残してスタスタと教室を後にしたのである。
あれから35年以上経った今の私なら、なんてミハイルに応えるだろうか?
「おめでとー!奨学金貰えるなんて凄いじゃん!いいなーロンドン!私も行きたいなー!」
思ってもいないくせに笑顔でこう言うだろうか? う~む・・これはこれで気持ちが悪い(笑)
こうしてスタンドバイミー的卒業旅行のメンバーは、マルコとオスカル、私の3人となった。
この後、私たちはこのやり場のない負の感情を引きずったまま卒業を迎えることになるのである。
つづく・・・