【あの頃イタリアで その92 トスカーナ卒業旅行⑩ 旅の終わりの犬】

【あの頃イタリアで その92 トスカーナ卒業旅行⑩ 旅の終わりの犬】

こんにちは。12月も半ばに差し掛かり、例年通り何だかザワザワしてきましたね。用事があっても無くてもなぜか心がザワつくのは、これはもう条件反射ですね(笑)

思いがけず長く続けられているこのブログも、残すところあと2、3回(計画性がないので書いてみないと分からないのです)となりました。ここまで続けられているのも読んでくださっている皆さんのお陰です!年内完結を目指しているので、あと少しお付き合いくださいね!

 

さて、いよいよ今日はトスカーナ卒業旅行最終回です!

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1996年7月10日。マルコからの突然の提案で(その91参照)、今夜が旅の最後の夜になってしまった。私たちは何となく感慨深げにテントを組み立て始めた。

作業する傍らで、どこからともなくやって来たブチ柄の痩せた野良犬が尻尾をぶんぶん振り回しながらはしゃいでいる。

 

夜空の画像

 

「じゃあ、これが最後の夜だな。」

「うん、そうだね。」

最後のおやすみを交わし、私たちはそれぞれ一人用、二人用のテントに別れた。その直後・・・

「うわ!お前の足クセ~!!」

「違うよ!俺じゃないよ!お前の足だよ!」

隣のテントから聞こえてくる“悪臭の擦り付け合い”。これが初めてではない。きっとどっちも臭いに違いないのに()

ホント、荷物にはなったけど一人用のテントで良かった!そして思う “やつらが一つのテントで寝るのもそろそろ限界だったかもしれないな~”と。

 

明かりが灯るテント

 

その深夜のこと。夢うつつの中・・・テントの外でガサガサと物音がする。なんだろ~?と思っていたその瞬間!何モノかがテントの張地越しに私の背中にピッタリと寄り添った。“え?!なんだ?!ちょっと重いな・・・だけど・・・暖かいな・・・zzz・・・”

 

翌朝。目が覚めると “それ” はまだ私の背中に寄り添っていた。どうやら夢ではなかったらしい。もしやと思い、そ~っとテントを出て後ろに回り込んでみる。

“やっぱり!” そこにいたのは昨夜の野良犬であった。

 

※ ↓ まだ熟睡中の犬

テントの外で寝る野良犬

 

「オマエのいびきがうるさくて寝不足だよ~!」

私が犬を撫でていたそこへ、ブツクサいいながらマルコがテントから出て来て、仏頂面でこちらを睨む。これも初めてのことではないが、ありがたく思え!これが最後なのだから!

 

※ ↓ 犬と記念写真

 犬と私

 

今日は寄り道をせずに真っ直ぐ出発地点だった“トッリータ・ディ・シエナ”(その83参照)を目指す。昼頃には着けるだろう。そこからまた車の荷台に自転車を積み込み、ミラノへと帰るのだ。

 

※ ↓ 悪臭といびきで寝不足顔のマルコとオスカル

寝ぼけ顔のマルコとオスカル

 

荷物を自転車の荷台に積み終え、サドルにまたがってもまだ野良犬は私のそばから離れなかった。自転車を漕ぎだしてもトコトコ後ろを着いてくる。

町外れの長い下り坂に差し掛かり、自転車は少しずつ加速していく。それでも犬は必死に追いつこうと全速力で後を追ってくる。

自転車がグングン加速して町の全景が見えてきたとき、犬はとうとう力尽きたらしく、見る間に引き離され、寂し気に立ち尽くしながら小さくなって視界の遠くへ消えて行った。

 

 トスカーナの田園風景

 

その犬を何度も何度も振り返りながら、なぜか涙が止まらなかった。拭う気にもならないくらい、止めどなく涙が溢れては風に飛ばされていく。

目の前には今日もマルコとオスカルの背中、そしてトスカーナの清々しい田園風景が広がっている。ペダルから両足を離して前に突き出し、重力に任せて猛スピードでグングン坂道を下って行く。グシャグシャになった顔から涙と一緒に鼻水まで飛び去っていく。

8日間のトスカーナの旅が、私たちの最後の旅が終わってしまった。

つづく・・・

 

※ ↓ 旅の終わりの記念写真

旅の終わりの記念写真

 

※この思い出話の舞台は1994年-1996年のイタリアです。スマホはおろか携帯電話やデジカメ、パソコンすら一般家庭に無い時代であり、主な通信手段は国際電話かFAXでした。

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